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やってくれたな、巻き込み婚

last update Huling Na-update: 2025-04-06 08:11:14
「確かにくだらないことしてたけど、邪魔はしたくないんだ。本当に。とにかく、俺はお前のハマりっぷりを鑑賞していただけだし!」

「ほう……

「見てたのは謝るから、俺を巻き込まないでくれ。俺はそんな風に役作って成り切れるような人間じゃないから! 演技力ゼロの下手くそを取り込んで、お前たちの世界観をブチ壊さないでくれ!」

「……風の精霊、コイツの本音をぶちまけてくれ」

「このまま誰かに見られて、俺まで変人扱いされたくない――っ! ……ハッ、口が勝手に……?!」

うっかり言うまいとしていた本音が口から出てしまい、俺の全身から血の気が引く。

ゴメン圭次郎。俺、お前のガチ寸劇は好きだけど、変人認定は嫌だ。

下手したら友だちなくしたり、問題児扱いされて大学受験にも影響出そうだし。

怒りでしかめっ面になっていた圭次郎の顔が、急に不穏な笑みを浮かべた。

目が据わっていて、今にも何か仕掛けてきそうなヤバさを感じずにはいられなかった。

「坂宮太智……お前の本音、しかと聞いたぞ。ここまで俺を不愉快にさせる存在がいるとはな……許せん」

うわぁぁ、本気で怒ってやがる……そうだよな、誰だって変人扱いされたら怒るもんな。

でも朝から晩まで徹底して王子様キャラになり切って、授業中まで戦闘ごっこしてたらそう思っちゃうだろ! 俺は悪くない。うっかり目撃してるのがバレただけの被害者だ。

もう気まずくなるの覚悟で、突き飛ばして圭次郎から逃げるしかない――俺が腹を括りかけたその時。

「すべての精霊に告ぐ……今この瞬間の証人となり、婚華の祝福を我らが手に宿したまえ」

いきなり圭次郎が左手を上げて呟くと、その手に一瞬閃光が走る。

そして掴んでいる俺の手を強引に持ち上げ、薬指に何かを捻じ込んできた。

その手は左――指の付け根に金色の指輪が輝く。

合わせたように、圭次郎の左手薬指にも同じ指輪がはまっていた。

「さあ、これでお前も俺と同じ側の人間になった」

「ど、どういう意味?」

「後ろを見れば分かる」

言われるままに俺は振り返る。

今まで何もなかったハズなのに、辺り一面に広がる白煙。

フワフワと浮かぶ、色とりどりに淡い輝きを放つ野球ボールほどの光球。

圭次郎から伸びていている、火で編まれた鎖。

それは煙の中でぎこちなく動こうとしている、極彩色な洋風の甲冑を着た男を縛り付けていた。

まさかこれ、圭次郎が今まで見
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    Huling Na-update : 2025-04-07
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    Huling Na-update : 2025-04-08
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    Huling Na-update : 2025-04-08
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    Huling Na-update : 2025-04-09
  • 寄るな、触れるな、隣のファンタジア~変人上等!? 巻き込み婚~   驚愕の二択。実質一択

    「やめろよ……っ、俺、男とヤりたくないからな! お前だって俺を相手にするの嫌だろ? ってか、俺が問答無用でされる側って――」「俺は別に構わないが?」爆弾発言を連発するなぁぁっ! 心臓に悪い。冗談じゃないって分かるから、威力が強すぎる。俺の心、すでに焦土化してるんだけど……。理解ができず頭が混乱するばかりの俺に、ケイロは爆弾発言の投下をまったくやめない。「俺は今まで他人に興味を覚えなかったが、勘違いとはいえお前には幾分か興味は湧いた。何も感情が湧かない人間を相手にするより、少しは感情を覚える相手のほうがマシだ。それが苛立ちであろうがな」イライラする相手のほうがマシって、理解できねぇ。まさかリンチ的な感覚で俺と初夜を迎えようとしてるのか?コイツ、頭おかしい。世界が違う住人っていうの抜きにしても、思考回路があきらかに普通と違うぞ?どうにか逃れようと手足をジタバタしてみるが、ケイロにのしかかられて抜け出せない。細身の割に力が意外と強い。俺、一応野球部でそこそこ鍛えてるほうなんだけど。コイツに力負けするなんて、なんか納得いかねぇ。抵抗を諦めない俺の顔を覗き込みながら、ケイロが抑揚のない声でさらりと伝えてくる。「ひとつ言っておくが、俺を拒むのはお前のためにならないからな?」「ど、どういうことだよ?」「王族である以上、互いに好まぬ相手と婚姻を結ぶこともある。だからこそ相手が裏切ることがないよう、この婚姻には制約がつく」制約……嫌な予感しかしないんだけど。俺が背筋をゾッとさせていると、ケイロの手が俺の下腹を撫でた。「定期的にお前の体内に俺の精を注がないと、指輪が婚姻継続の意志なしと判断してお前の命を奪う。死にたくなければ抵抗を諦めろ」「……え? せ、せい……?」「俺の精液をお前の中に出す」オ、オイオイオイ……死ぬか中

    Huling Na-update : 2025-04-09
  • 寄るな、触れるな、隣のファンタジア~変人上等!? 巻き込み婚~   ●魔法がズルい

    その自信はどこから来てんだよ。怖ぇな……。まさか元々男が好きで、経験豊富だったりするのか? だからここまで落ち着ていられるのか?これから何をされるのか考えたくもないけど、そもそも未知の世界だ。自分がそうなることなんて想像すらしたことがなくて、俺はただ頭の中を真っ白にさせて身を強張らせる。そんな俺の首元に、ケイロがそっと手を置いた。「水と火の精霊よ、この身に流れる同胞と踊り、快く昂らせよ……」言い終わらない内に、首筋に妙な熱が灯る。チリチリと燃えているタバコの火のように、熱が小さな点で蠢いているような――と思っていたら、それが一気に全身へと広がって俺を弄び出した。「ひっ……ぁ……体が、痺れ……? なん、だコレ……ンっ……」首筋に触れているケイロの手の感触が、やけに鮮明になっていく。温かい手。肌が変にざわついて、痺れみたいなものが体の中に広がって……うわっ。ざわざわする。心臓がバクバク鳴って、背中やら下半身やらが落ち着かない。ブワッ、と肌が汗ばんで、目元が熱くなる。自分でも目が潤んだのが分かって、情けない顔をさらしている現状に唇が震え出す。恥ずかしすぎる……っ。でも体がおかしくなって嫌なのに、もっと触ってほしくてたまらない。一気に変わってしまった俺を見下ろしながら、ケイロが小さく笑った。「初めてでも受け入れられるよう、体の感度を上げさせてもらった」「な、なんだって……!?」「痛がる顔を見ながらしてもつまらん。どうせなら、強がりが言えなくなるまで、丁寧に仕込みたいところだな」「はぁ? お前、なに気持ち悪いこと言って――はわぁぁ……っ」いきなりケイロに耳をかじられて、思わず俺

    Huling Na-update : 2025-04-10
  • 寄るな、触れるな、隣のファンタジア~変人上等!? 巻き込み婚~   ●順番おかしくないか?

    ……どうしよう、嫌な予感しかしない。ケイロの不穏な発言に内心冷や汗をかいていると――にゅるり。生温かくて粘ついた何かが尻の割れ目に貼り付き、俺の中へと入っていく。「な……?! うぁ……ナカ……ひっ……動いて……やだぁぁ……!」ワケの分からないものが体の中で蠢いて、思わず俺はシーツを掴む。ぐりゅん、ぐりゅん、と円を描くように動きながら、奥へ、奥へと進んでいく感触。怖くて仕方ないのに体は激しく疼いて、俺の心と裏腹にびくんっ、と全身が甘く跳ねる。もう意地もプライドもあったもんじゃない。俺はケイロの腕に指をかけ、か弱く掻きながら訴えた。「これ、ヤダぁ……やめろよ、変なもん入れるの……頼むからぁ……っ」「そう怖がるな。水の魔法で中を洗っているだけだ」「あ、洗って? そ、それだけ……ぁあ……ッ」「ついでに潤滑剤の効果も付与してある。潤いは十分か、確かめてやろう」悪戯な笑みを浮かべながらケイロは俺の中へ指を捻じ込んでくる。指先で入り口を軽く揉まれ、ぬちゃ、と粘った音が聞こえる。それが耳に入ってくるだけで恥ずかしくて死にそうだ。でも気持ち良くて、ずぶずぶと沈んでいく指がたまらない。「あ、ぁ……ン……はぁ……ぅぅん……」「指だけでも気持ち良さそうだな。中も十分に柔らかい……なんだかんだ言いながら、やっぱり悦んで俺を受け入れる体になってくれたな」言いながらあっさりと指を引き抜き、ケイロが自分の服を抜き出す。細身の割に筋肉がついた、しなやかな体が現れて思わず俺は見入っ

    Huling Na-update : 2025-04-10
  • 寄るな、触れるな、隣のファンタジア~変人上等!? 巻き込み婚~   初夜の後遺症は根深くて

       ◇ ◇ ◇――朝、目が覚めて一番に思ったこと。あー……あり得ねぇ夢見たな、だった。そして起き上がったら素っ裸で。下半身がものすごく気だるくて。百谷家側の窓の前にある光のモヤモヤが消えてなくて。俺のパジャマも、アイツが着ていた服も床に散らばっていて――。「……はぁぁぁぁぁぁぁ……」昨日の強制ファンタジック初夜、全部現実だった……。夢でも見ねぇようなことするんじゃねーよ……と、俺は朝から肩を落とし、激重なため息を吐き出した。思い出したら悶絶して一日終わりそうな気がして、なるべく無心になって身支度を済ませ、朝食を済ませて家を出る。ガチャッと家に鍵をかけて道に出れば、まるで示し合わせたかのように隣の家からケイロが出てきた。俺に気づいてジッと見つめた後。ケイロは優越感いっぱいに微笑みながら近づいてきた。「昨夜はよく眠れただろ、花嫁殿?」「……寝たっていうより、気絶させられたようなもんだろ……やりすぎだってアレは……っ」俺を魔法でおかしくした挙句、好き勝手に抱きまくった張本人。その顔を見たらどうしても昨夜のことが脳裏によみがえって、俺の顔が熱くてたまらなくなる。耐え切れずに俺はケイロより前に出て、さっさと学校に行こうと一歩前に踏み出す。背後から早歩きで俺に迫って来る足音が聞こえた。「待て。言いそびれていたが――」ぽんっ。ケイロが俺の肩を軽く叩いて話しかけてくる。その途端、「……ッ! ぁぁ……ッ」昨日ケイロから散々教え込まれた感覚が――腹の奥からこみ上げる疼きが、俺の全身を駆け巡ってしまう。思わず膝から力が抜けて、その場に崩れ落ちてしまった。

    Huling Na-update : 2025-04-11

Pinakabagong kabanata

  • 寄るな、触れるな、隣のファンタジア~変人上等!? 巻き込み婚~   ●苛立ち紛れで結婚したんじゃないのかよ?

    「あ……っ……く、ぅぅ……やめろ、ってぇ……汚い、から……」「きれいにすれば問題ないんだな?」おもむろにケイロは俺の胸中央に手を当て、小さく呟く。ザァ……ッと全身の肌を、生ぬるいお湯でも流れていくような感触が広がる。表面だけじゃない。口内も、尻の奥も、ぬるい感触が撫でていく。指先までそれが行き渡ると、妙にさっぱりとした爽快感がやってきた。身を清める魔法。なんて衛生的で、親切で、そんな魔法が存在するほどケイロの世界はエロが盛んなのか? と思わずにはいられない。「ン……お前なぁ……魔力、切れかかってたんじゃねぇのかよ……」「これは消費が少ないから問題ない。子供でも使える初歩の魔法……覚えてみるか?」一瞬、便利でいいかも……と思ったが、すぐに考えを変えて俺は首を横に振る。「……やめ、とく。いいようにコキ使われそうだし」半分だけの本音。もう半分は、今よりもケイロたちの世界に深く関わるようになって、本当にこっちの世界へいられなくなりそうな気がして怖いという弱音。そんな俺の不安などお見通しなのか、ケイロはどこか宥めるように俺の頬や額に柔らかく口付けながら囁いてくる。「気が変わったらいつでも言え……どうせ俺の世界へ行けば、堅物の魔法教師に教わることになる。俺から教わったほうが楽だと今の内に言っておくぞ」「ケイロ……っ、そん、なこと言って……できるまでイかしてやらない、とか言って焦らしプレイする気だろ……ぁ……」「よく分かってるじゃないか。さすがは俺の嫁」分かって当然だろぉ……! この短期間でどれだけ振り回されていると思ってんだ!お前がクールなフリして、中身は俺相手におっ勃てられる悪趣味などエロ好きっていうのはよく分かってんだからな?恨み節のひとつも言ってやりたいけれど、体をあちこち触られて、もう俺の口からは嬌声しか出てこない。せめて反発くらいはしたくて、力なく握った拳でケイロの胸をポカポカと叩くが、あまりのか弱さに泣けてくる。ささやかな文句すら許さないとばかりに、ケイロは俺の手首を掴み、腕を開いてベッドに押さえつけた。「……俺から逃げられると思うなよ、太智。手放してなんかやらない……お前は俺のものだ」あまりに熱い眼差しを送られながら宣言されて、俺は呼吸を忘れる。どうしてそこまで言う?苛立ち紛れで結婚したんじゃないのかよ? お前

  • 寄るな、触れるな、隣のファンタジア~変人上等!? 巻き込み婚~   ●治療のお礼の治療はやめろ

    ◇◇◇ケイロを引き連れて保健室へ行くと、既に事態を知っていたのかソーヤさんが消毒液とガーゼを用意して待ち構えていた。「お待ちしておりました殿下! 早くベッドへ――」「ソーヤ、お前は邪魔だから出て行け。アシュナムと合流して、運動部の部室裏と用務員室を調べに行って来い」本気で心配する臣下を、ハエでも追い出すかのようにケイロが手で払う仕草をする。おいおい、いくらなんでもその態度はないだろ……。 俺が頭を痛めていると、ソーヤはハッと息を引いてから俺とケイロを交互に見る。そして気まずそうに目を逸らした。「わ、分かりました。あの、部屋の鍵は……」「もちろん閉めていけ。誰も入れさせるな」一瞬、俺に気の毒そうな視線を送ってから、ソーヤさんは持っていた手当てセットをデスクに置き、「……失礼します」と保健室から出て行く。そ、そんなあっさりと……あの、コイツと二人きりって、嫌な予感しかしないんですけど。俺が呆然と突っ立っていると、ケイロは自分からパイプ脚のベッドへ腰かけ、上の服を脱いだ。「太智、早く手当てしてくれ」「あ、ああ……ん? お前にこっちの薬って効くのか? ってか魔法で回復しないのかよ?」「その薬は俺たちの世界から持ってきた物だから普通に効く。あと回復魔法は魔力の消費が激しいから、なるべく使いたくないんだ。こんな打ち身程度に使うなどもったいない」魔法も万能ってワケじゃないんだなあ、と興味津々になりながら俺はケイロの腹部を手当てしていく。こういう処置は部活で慣れている。けど、ケイロに近づいてやらなくちゃいけないから、体が疼いて落ち着かない。ケイロの肌に指先が触れると、手が小さく震えて、腰の奥が甘く痺れる。 緊急事態だっていうのに、俺の体が不謹慎で泣きたい……こんなエロ変換体質が離婚するまで続くなんて――。さっさと終わらせてコイツから離れるに限ると、手早く済ませて俺は手当てセットを片付けようとした。その時、「俺から離れるな、太智」手首を掴まれたと思ったら、グッ

  • 寄るな、触れるな、隣のファンタジア~変人上等!? 巻き込み婚~   校舎裏の見事な土下座

    ◇◇◇「太智殿、迷惑をかけて本当に申し訳ない!」誰もいない校舎裏まで俺たちを連れて来ると、アシュナムさんは勢いよく土下座した。立った状態から土下座ポーズになるまで、一秒もかからなかった。なのに土下座の形を取るまでの動きがすごい丁寧で、芸術性すら感じてしまうほどだ。何度も練習しないと身に着かないきれいさ。こっちの世界へ来る前に風習とか歴史とか調べて、必要になると思って練習したんだろう。ケイロに対して怒った姿ばかり見てきて、怖い人というイメージが強かった。けれど、真面目で責任感が強い人なのだと分かって、前よりも親しみを覚えることができた。「いえ、むしろ勝手に動いてすみません。あのままだとケイロが学校に居づらくなりそうな気がしたので……」「ここしばらく相手の動きがなくて、我々が焦ってしまった結果です……殿下も太智殿もお怪我はありませんか?」アシュナムさんが顔だけ上げて俺たちをうかがう。俺は大立ち回りをして軽く疲れた程度。でもケイロはその前から戦闘していたし大丈夫なのか? と、俺も距離を取りつつ横に立つケイロを見る。一見すると問題がないように見えたが、ケイロはカッターシャツの裾をめくり上げて腹部を晒し、赤く腫れ上がった爪痕を見せてきた。「ヤツらが現れた時に奇襲を受けてな……一撃を食らってしまった。こっちの服を着ていたおかげで威力は軽減できたがな」白い腹に痛々しい痕を目の当たりにして、俺は顔をしかめてしまう。「……なあ。もし肌に直接攻撃されたら――」「肌が裂かれて血しぶきが飛び散るな。下手すれば手が千切れる……首なら即死だな」「やっぱりかぁぁ……最悪、全校生徒がトラウマ持ちになる惨劇になりそうだったんだな」俺の顔からサァーッと血の気が引く。ちょっと油断したら倒れるぐらいの引きっぷりだ。でもケイロは平然と

  • 寄るな、触れるな、隣のファンタジア~変人上等!? 巻き込み婚~   ヤケに息が合うのは……

    互いに目を合わせて意思を確かめた後、ケイロは剣でホウキを押し返し、俺を突き放した。「この俺とやるつもりか、坂宮太智! いいだろう……元より俺とお前で力の差は歴然。素手で相手してやるから、遠慮せずにその得物で殴りかかって来い」よし、ノリノリだなケイロ。俺は演技できない人間だから、本気でふざけさせてもらうからな。そんな俺たちの周りを黒い狼たちが取り囲み、攻撃するタイミングをうかがう。グルルル、って低い唸り声があちこちから聞こえてくる。怖ぇぇ……生きた心地がしない。でも、こんな中にケイロを一人にするなんて無理だ。顔を引つらせながら、俺はニヤリと笑ってホウキを構えた。「その台詞、後悔するなよ? どっちが強いか、今日こそハッキリさせてやる!」大きくホウキを振り上げながら、俺はケイロに突っ込んでいく。スッ、と横に避けられても敢えて踏み止まらず、そのまま狼たちの所を目がけてホウキを振り抜けば、狙い通りに当たって狼が吹っ飛ぶ。二匹ヒットした内、一匹が黒い煙と化して姿を消す。どうやら一定のダメージを与えると倒されて消滅するらしい。なんかゲームっぽい。俺の攻撃を参考にしたのか、ケイロの動きが大袈裟になり、俺へ殴りかかるフリをしてくる。それを避けた俺を通り過ぎてから思いっきり剣を振るい、狼たちを斬り付けて着々と倒していく。自ら飛び込んで俺たちを襲ってくる狼に対しては、「百谷、脇がガラ空きだぞ!」なんて注意を促しながら、俺はホウキを真っすぐにぶつけて狼を突く。ケイロもケイロで、「右が隙だらけだな。そんな雑な動きで俺に敵うと思ってるのか!」丁寧に攻撃する箇所を先に告げ、剣を繰り出して狼を払ってくれた。たぶん傍から見れば、男子生徒二人が厨二病全開で悪ノリ満載なケンカをしているように映っていると思う。もしくは完全悪ふざけ。変人認定だけは避けたい気持ちが同じなせいか、それとも肌を何度も合わせているせいか、やけに息が合っ

  • 寄るな、触れるな、隣のファンタジア~変人上等!? 巻き込み婚~   変人回避なら悪ふざけ上等

    つ、ついに来た!  いつかあるんじゃないかって思ってた、変人確定案件!みんなが見ている中で襲撃されて、必死に戦うほどに変人扱いされていく――命のやり取りしているだけなのに、なんて理不尽なんだ。しかも苦戦してるっぽい。「アイツ……っ!」思わず俺は美術室を飛び出し、勢いよく階段を下りていく。魔法も何も使えない俺が行っても、戦力にはならないかもしれない。 でも、こっちの人間でありながら、ケイロたちの現状を見られる俺だからこそできることもある。一階に着くと俺は廊下の窓を開け、そこからジャンプして中庭へと移動した。さっきまで使っていたホウキの柄を、しっかりと握り締めながら――。「このっ、覚悟しやがれ!」俺は両手でホウキを持ち、思いっきりバットを振り抜くようにして漆黒の獣たちにブチ当てる。てっきり効かないと思ったが、振り抜く間際にホウキにが光り、キャウン、と意外に可愛い声を出しながらダメージを受けていた。どうやらケイロが何かしたらしい。そして、その勢いのままケイロにホウキを迫らせる。 もちろん本気で当てる気はない。剣とかち合わさる所で寸止めし、小声で話しかけた。「いったい何があった? スゲー目立ってるぞ」「校舎の外を調べていたら襲われた。シャドウウルフ五十匹……数が多すぎて戦闘が長引いてしまった」「マジかよ……コイツら、魔法で一気にボンッと倒せないのか?」「魔力不足だ。かろうじて物に精霊の力を宿す程度しかない」話している途中に黒い狼が俺たちに飛びかかってきて、ケイロが剣の切っ先で斬り付け、後退させる。コイツら、直接攻撃しかできないってことか――じゃあ好都合だ。俺はニッと歯を覗かせ、ふてぶてしく見えるように笑った。「よし。じゃあ今からケンカごっこするぞ、ケイロ」「な、んだと……?」「俺とお前は、今からここで悪ふざけで大ゲンカするフリして派手に立ち回る。そうすれば、そこの黒わんこを倒しながら変人に見られるのは避けられる」

  • 寄るな、触れるな、隣のファンタジア~変人上等!? 巻き込み婚~   気持ち良すぎるのがダメなんだ

    ◇◇◇キスでイかされた上に、もう俺の体がケイロに逆らえなくなっている現実。かなりショックだった。信じたくない現状を突きつけられたせいで、午後の授業はまったく頭に入ってこなかった。ノート取るフリして、大昔のボクシング漫画にあったような真っ白燃え尽き状態で、俺は呆然とし続ける。なんかケイロの言う通り、俺、アイツの嫁化が進んでないか?脅されたとはいえ、真面目にまともな愛妻弁当作ってるし、危ない目に遭わなきゃいいなって心配してるし……アイツに理不尽な目に遭わされて、腹が立ってるハズのに。たぶん、あれだ。気持ち良すぎるのがダメなんだ。魔法で感じる体にされたら、嫌悪感なんか吹っ飛ぶ。何されてもよがって、「もっと……」なんてせがんじゃうし。しかも成り行きで仕方なしなハズなのに、ケイロがスゲー嬉しそうに俺を抱いてくる。特に俺が強請ると、あの無愛想な美人ヅラが緩むんだ。そして気絶するまで何度もイかせてくるんだ。……絆されかけている自覚はある。まったく……なんなんだよアイツ?どうして好きでもない男を嫁にして、喜んで抱けるんだよ?王子様だから、一般庶民で異世界の住民な俺が物珍しいから遊んでいるんだろうな。うん。珍獣の反応を面白がって、自由に遊べない鬱憤を晴らしているに違いない。……でも、その割には抱いてる時の目が優しいんだよなあ。普段は小馬鹿にした感じで見てくるクセに。アイツ、本当は俺のこと、どう思ってんだ? 知りたいけど、聞くのが怖ぇ。実は物好きで溺愛してますっていうのも嫌だし、愉快なオモチャに思われているって確定するのも嫌だ。ああ、考えるだけ不毛な底なし沼にハマっていく。今日最後の授業が終わる頃には俺の心の体力は空っぽで、生きる屍と化して机に突っ伏すしかなかった。こんな情けない姿、ケイロに見られなくて良かった。マジで。

  • 寄るな、触れるな、隣のファンタジア~変人上等!? 巻き込み婚~   不意に近寄られて

    ◇◇◇昼食を終えて「ちょっとトイレ」と席を立った俺は、ようやくケイロの気配がない場所へ行けて心からホッと胸を撫で下ろした。教室から敢えて遠い所にある、人気のない三階の視聴覚室近くのトイレ。辺りの静けさに癒しを覚えるのは初めてかもしれない。ああ、トイレっていいな……解放感がハンパない。出すもの出して体もスッキリした後、いつになく爽快な気分で手を洗っていると、「……太智」「ふわぁぁぁぁ……ッ!」突然耳元でケイロの声がして、俺は思わず腑抜けた声で叫びながら耳を押さえ、慌てて振り向く。すると視界一面にケイロの顔が広がって、俺の体から一気に力が抜けた。危うく尻もちをつきそうになったが、グッと抱きかかえられて無様な転倒は回避できた――その代償は余計にひどかった。「ば、バカ……っ、学校で、近づくなってぇ……ン……ッ」「離れる前に一言伝えておこうと思ってな……午後の授業、抜けさせてもらうぞ」こ、声が耳に響いて……ヤバい。これだけで腰が砕けて、体の中がイカれていく。どうにかしてくれ、と泣いて縋りそうになるのを堪えながら、オレはケイロに尋ねる。「……っ……なに、か……あったのか……?」「ここしばらく裏切り者からの動きがない。だから俺が陽動してやろうと思ってな」「そっか……ッ……まあ、気をつけろよ……」「心配してくれるのか? 俺の妻が板についてきたんじゃないか?」……は?体の疼きを必死に堪えている中、耳を疑うことを言われて俺は思わず

  • 寄るな、触れるな、隣のファンタジア~変人上等!? 巻き込み婚~   体の関係を持つってスゲーんだなあ

    「まあそんなところだ。コイツと一緒というのは気に食わんが、既製品ならば仕方ない」珍しくケイロが俺の話に乗っかってくる。ちょっとは連携プレーっていうのが分かってきたみたいだな。でも悠は首を傾げるばかりだった。「うーん……でも、そこそこ使い古されたというか、くたびれ感があるんだよなあ……確か中学から使ってたような気がするんだけど」悠、お前案外と細かく見てるのな!? このままだと俺とケイロが不本意ながら結婚しちまって、深い付き合いに発展していることに気づきかねない。さっさと話を流してしまおうと、俺は話を切り替えた。「な、なあ悠、今度の球技大会、お前どれに参加する?」「一応サッカーを考えてるよ。太智は? 自分の部活以外の球技選ばなくちゃいけないから、野球以外になるだろうけど……」俺も悠も野球部に所属している。毎度県大会では結果を残せないけれど、楽しくテキトーにやれるからありがたい。弁当の肉じゃがを一口食べてから、俺は悠の質問に答える。「俺はバスケやってくれって言われてる。本当は俺もサッカーやって、ゴールキーパーになって休みたい」どうにか話を逸らせたと安堵していると、事情を一切知らない悠はケイロへ話を振る。「百谷君は身長が高いから、バスケ強そう。前は部活何やってたの? やっぱりバスケ部で、球技大会は別の種目になっちゃうかなあ……」ケイロの箸が止まり、表情が消える。前までは何を怒っているんだ? って思ったけれど今なら分かる。 平静を装いながら、実はかなり戸惑っている時の顔だ。だって体育に教科書はないもんな。保健体育ならあるけど、競技の詳しいルールや説明なんて書いてないもんな。それに転校してきてからバスケはまだしてないもんな。 知らないことで、どう答えればいいかと苦慮しているといった感じだろう。強制婚させられて深い関係になったせいで、ケイロの心の機微がなんとなく分かるようになってしまった。お互いにまだまだ知らないことたくさんあるのに……。 体の関係持つってスゲ

  • 寄るな、触れるな、隣のファンタジア~変人上等!? 巻き込み婚~   強請られた愛妻弁当

    ◇◇◇俺がケイロたちのアドバイザーになってから、約二週間ほどが経過した。それはケイロと夫婦になってどれだけ経ったかでもあるが、俺の中で同意してないから不成立だ。定期的に濃い夫婦生活を送っていたとしても――経過し、この生活に少し慣れてしまった頃だった。「太智、百谷君、お昼食べよう――って太智、どうしたの? なんか、少しやつれてるけど……病気?」四限目が終わっていつものように俺たちの所へ来た悠が、ぐったりと机に突っ伏す俺を見て心配そうに声をかけてくる。「病気じゃねぇ……ちょっと、色々あって……朝から疲れた……」……いくら友人でも言えやしねぇ。夜に散々抱かれた挙句、やっと終わってぐったりしている時。「昨日本を読んで知ったんだが、この世界には愛妻弁当なるものがあるらしいな。作れ」突然ケイロがとんでもないことを言い出して、朝から弁当を作るハメになったなんて……。もちろん最初は、こんなにヤられまくった翌朝に作るなんてしんどいだろ! 朝から疲れてるから無理だ! って全力で断った。それなのに、「では作る気になるまで、学校でもお前を愛でてやろう」なんて更にとんでもないことを言ってケイロに脅され、いつもより早く起きて渋々作ってやったのだ。愛妻弁当じゃなくて、渋々不本意妻弁当だけど。だって、コイツに近づかれるだけで体がビクビクするし、触られたら――その場で身悶えて、変人通り越して変態確定間違いなし。俺の人生、完璧に終わる。一応母さんに仕込まれて、簡単な料理はできる。でも普段から作ってるワケじゃないから本当に大変だった……。そんな俺の苦労に気づいているかどうか怪しいケイロは、どこか自慢げに笑いながら弁当を出した。どこにでもあるような青い巾着に入った、二段重ねの黒い弁当箱。俺がたまに使っているもの。自分の弁

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